生地に対する針と糸の適性
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1,ミシン針について
針は縫製する上で、一番重要なファクターです。
針はアパレル製品の品質を決定する要素を持ち、生地の種類(布帛、ニット、皮革などの素材の種類、生地の厚さ薄さ、織密度、糸の太さ細さなどにより一番適した針を使い分けしなければなりません。
ミシン針は家庭用、工業用ミシン、本縫い、縁かがり縫い(オーバーロック)、掬いなどあらゆる加工方法により、何百種類の針がありますが、下記に代表的な針について記述します。
針記号は日本のオルガン針株式会社の使用する商品記号です。
ミシンの種類 | 針記号 | 適応素材、針の特徴 |
---|---|---|
本縫いミシン | DB×1 | 一般布帛用 |
DB×1KN | ニット用 | DB×1SF | 新合繊 |
DB×1SU | スパー針(テフロンコーティング)、溶融しやすい生地 | |
DB×1PR | 針先端がナイフ状、糸引き、糸返り防止対策 | |
縁かがり、安全縫い | DC×1 | 一般布帛用 |
DC×27 | 一般布帛用、DC×1の改良型 | |
DC×1SU | スパー針(テフロンコーティング)、溶融しやすい生地 | |
DC×1KN | ニット用 | |
眠り穴、閂、千鳥縫い | DP×5 | 一般布帛用 |
DP×5KN | ニット用 | |
DP×5SF | ファインゲージニット、裏地、新合繊 | すくい縫い | LW×6T | 曲り針 | 単環釦付け縫い | TQ×7 |
必ず試縫いして、ご確認してください
2,ミシン糸について
ミシン糸は現在、アパレル生産に使用されるのは、ポリエステル糸やナイロン糸などがほとんどです。 一部特別な用途に対して、麻や綿糸、絹糸が使用されています。
下記に代表的な糸について、記述いたします。
繊維名 | ミシン糸 | 特徴 |
---|---|---|
合成繊維 | ポリエステルフィラメント糸 | ステッチなど表部分に使用 |
ポリエステルスパン糸 | 主に地縫いに使用 | |
ポリエステルウーリー糸 | 伸縮性があり、ニット製品に適する | |
ナイロンフィラメント糸 | 強度がある。伸縮性がある | |
ナイロンウーリー糸 | 伸縮性があり、ニット製品に適する | |
再生繊維 | レーヨンフィラメント糸 | 主に刺繍糸に使用 |
天然繊維 | 絹フィラメント糸 | 光沢が美しく高級品に使用 |
絹スパン糸 | 光沢が美しく高級品に使用 | |
綿糸(カタン糸) | 躾糸などに使用 | |
麻糸 | スーツのボタン付けなどに使用 | |
その他 | コアスパン糸 | 複合糸、自動機に主に使用 |
3,生地と針と糸の適合
生地の特性に合った針と糸の選定は大変重要です。そのためには生地の繊維名と糸の番手(太い、細い)組織(織物かニットか)、縦横伸度(伸びる、伸びない)を確認して、その条件に合った糸と針を選定します。
特に、縫製トラブルでの中で、地糸切れ、糸返り、糸引き、柄ズレは、生地と針のミスマッチで起こる可能性が高いです。
このような時に、特殊の針を使用して、不良を事前に防止することが可能です。
下記に、生地別の一般的な針と糸を表示します。
生地の特徴 | 主な種類 | ポリエステル糸(番手) | 本縫い使用針・番手 |
---|---|---|---|
薄地 | 裏地 | 60~100 | DB×1 8~11 |
オーガンジー | |||
ガーゼ | |||
シフォン | |||
ジョーゼット | |||
普通地 | サージ | 50~60 | DB×1 11~14 |
ギャバジン | |||
サッカー | |||
サテン | |||
フラノ | |||
ポプリン | |||
リネン(麻) | |||
厚地 | キルティング | 50~60 | DB×1 14~16 |
コーデュロイ | |||
ツイード | |||
伸びる生地 | ジャジー | ポリエステルウーリー糸50~60 | DB×1KN 8~10 |
Tシャツ地 | |||
トリコット | |||
フリース | |||
スムース | |||
デニム | ジーンズ | ジーンズステッチ20~30 | DB×1 14~16 |
必ず、試縫いして、ご確認してください
生地別の標準条件で、試縫いして、地糸切れや糸引け、糸返りが発生する場合は、下記の対策を行う。
1, 糸引け(織り糸引け)
{症状} 織糸が引き込まれて移動した道筋で光沢が違って見えたり、プリント地の場合は柄ズ
レが発生する。
{原因} 生地の組織や織り糸の太さなどに適さない針の使用とか、針の曲りや先端の潰れなど
のために、針が織り糸を分けて貫通せず、糸を引き込む。
{対策} できるだけ、細いニット用の針を使用する。それでも、解決できない場合は、オルガ
ン針株式会社のNSシリーズで、 先端がスリムなボールポイント2段形状のない針を
使用する。オルガン針 DB×1NS
2,地糸切れ
{症状} ミシン針により、織り糸やニット地が切断された状態。ニット地はランが(編み地の
ほつれ)発生する。
{原因} 生地の組織や織り糸の太さなどに適さない針の使用とか、針の曲りや先端の潰れなど
のために、針が織り糸を分けて貫通せず、糸を引き込む。
{対策} できるだけ細い先端がスリムなボールポイントを使用する。(オルガン針BPシリーズ
からサイズの合う物を選択する。)
3,糸返り
{症状} 針が貫通したときに織り糸がその衝撃で糸が回転し、裏面の糸が表に出る現象。捺染
プリントの場合は表側に裏面の白地が出る。
{原因} ミシン針が布を貫通したときに衝撃で織糸が半回転する。
{対策} できるだけ、細い針、糸を使用する。又は、オルガン針のKN・SFシリーズを使用す
る。
マトメ
①特に、新素材や難素材(新合繊、高密度織物、ストレッチ、コーデュロイ、人工皮革など)の場合は、工場任せにせず、アパレル企業側で、生地に適合する針や糸を選択する試験を行う必要があります。
②試縫いは長さ10cや20cでは糸切れなどの不良の再現性が難しいので、試縫い長さは最低でも30cで、連続縫いで行う。又、スピードは工場の生産スピードを想定して、最低でも毎分3000回転以上で行う。
ここでは、詳しい説明は行いませんが、連続縫いよる針と生地の摩擦によるに針熱温度の上昇も生地の種類により不良問題に影響を与える場合があります。
③肩地縫いなどを想定して、縦方向だけでなく、横方向の試縫いも行う。
④レギュラー針で問題が発生した場合は、糸の太さやミシン糸の規格や番手を変更して、再度試縫いを行い、それでも問題が発生する場合は、オルガン針のNSシリーズやKN、SFシリーズで再度、試縫いを行う。